Trials to summarize OKAZAKI KYOKO's unbind comics岡崎京子の未単行本化作品を要約する試み - 恋人たち1

恋人たち1 銀座3丁目から(マガジンハウス) 1990年9月号※短編集「恋とはどういうものかしら?」(2003年5月 / マガジンハウス)に収録

土曜日の午前中、動物園の熊のようにうろうろと動き回りながら彼からの電話を待っていた彼女だが、いざ電話がかかってきてみれば、口紅は上手くのらないし、洋服も決まらない。髪の毛はぐしゃぐしゃでイライラしてしまう。それでも彼に逢いに行かなければならない。あんなに逢いたかったのにひどく億劫になって、彼女はユウウツになる。出かけた先ではバナナジュースが飲みたかったのにミルクティを頼んでしまったり、彼も何かに疲れているようで、何もかもがちぐはぐな日曜の午後。特に話す事もなく、お茶を飲んだり、街中を歩き回ったり、(面白くもない)ナイターを見に行ったり。そして彼の家に向かい、抱き合って眠る。ちぐはぐな感情も複雑な気持ちも、夢の国には潜りこめない。

恋人同士という関係においても、互いの自我を内包していて、時にそれが「幸せ」の障害になるとかそういう読解をしたけれど、意味以前にもっと叙情的で、それは(画力も表現力も格段に上達しているのはいうまでもないけれど)単行本バージン所収の初期短編のような手触りを感じる。

時期的には彼女の結婚と重なり月刊カドカワで結婚について答えていた、一緒に暮らすことで見えてくるヤな部分や煩わしさを感じる部分、「楽しい!」だけじゃやっていけない部分、そういった意識が含まれている気がしなくもない。