Trials to summarize OKAZAKI KYOKO's unbind comics岡崎京子の未単行本化作品を要約する試み - 東方見聞録

東方見聞録 ヤングサンデー(小学館) 1987年No.1~No.14 ※2008年2月、小学館クリエイティブより単行本刊行

吉太郎がサックスの練習を双子の姉たちに咎められ、マスでもかくか、とエロ本を広げいざ始めようとすると、東京タワーの展望台、望遠鏡から「私の相棒」と吉太郎を見つけていたキミドリが唐突にやってきた。キミドリによれば、彼女の祖母と吉太郎の祖父は熱い恋仲だったが事情により結ばれる事はなく、その思いを孫に託した、という。キミドリは「私のフィアンセとして、一緒にいろんなところに行き、一緒に写真を撮ってアメリカの祖母に送らせて欲しい。53枚集まれば祖母の遺産がもらえるから、そしたら50%あげるから!」と、誘うが、吉太郎は聞く耳持たず帰らせてしまう。翌日制服を着て学校にまで乗り込んできたキミドリの熱意に、日常に退屈していた吉太郎は例え祖父の話がウソだとしても、キミドリが頭の足りないコだとしても、そう悪い話じゃない、と旅立つ決意をする。

祖母の思い出の地である銀座からはじまり、国会議事堂、中野、国立、江ノ島、青山墓地、井の頭公園、神田書店街へ赴きデート(のようのもの)を続けていく。途中、吉太郎がクラスメイトの鈴木さんと良い雰囲気になりつつも、自室でいざキスしようとしたら鼻血を出しフラれたり、キミドリの祖母が危篤の知らせ(ガセ)を受け一時ハワイに戻り、吉太郎のもとにハワイ土産としてエロ本が送ってきたり、二人で近所の中学生のデート(らしきもの)を尾行して観察したり。

ある日唐突に「今度は祖母がホントに危ないからハワイに帰らなければいけなくなった」とキミドリから聞き、吉太郎は空港で別れ際に「キミの事、ちょっと好きだったよ」と告げる。「冬休みにはバイトしまくってハワイに行くから」と。

ハワイに連れ戻されたキミドリ。父と義母に学校に行かずワガママ放題であることをたしなめられる。登校拒否児童のあなたが学校に行くのなら好きなところへと行かせてあげると言われた彼女は迷わずに「日本がいいな」。

恋愛もの。互いの気持ちの疎通が物語のカタルシスであり、ハッピーエンド。少女漫画の王道としか言えない(青年誌の連載で、主人公はオトコだけど)展開。そういった漫画的な部分よりも、ある種東京(と近郊)観光案内であり、漫画と言う形を借りて東京に対しての彼女の雑感や主張のようなものが盛り込まれていると点が魅力的。矢口博康による観光地楽団が1984年、中沢新一と細野晴臣の観光(及び、細野によるモナドレーベル)が1985年からと見ると、その辺りからの影響か?