Trials to summarize OKAZAKI KYOKO's unbind comics岡崎京子の未単行本化作品を要約する試み - 砂漠王子と砂漠王女

砂漠王子と砂漠王女 月刊砂漠王(ラジカル・ガジベリビンバ・システム・パンフレット) 1989年12月号 チャオ★アンファンテリブル(BNN) 1992年3月 SWITCH(スウィッチ・パブリッシング) 2000年1月号 ※短編集「恋とはどういうものかしら?」(2003年5月 / マガジンハウス)に収録

世界にたった二人残された人口受精児、のび太としずかはドームの中でネコ型育児ロボットどらえもんに育てられていたが、二人の15回目の誕生日、どらえもんは耐用年数を迎え、動かなくなってしまった。残された二人はどらえもんの力に頼る事も出来なくなり、食料を調達する為にテレビやビデオで見知った「世界」に期待と不安を抱きながら「ドームの外」へ旅立った。が、ドームの外に胸踊るものは何もない。何もないが、とりあえず二人はラリったりセックスしたり、面白おかしく暮らした。いつまでも生理も精通もない、成長の止まった二人は「いつか」誰かが見つけてくれる、と地面に大きな大きな絵を書いてみたりする。

藤子不二雄のキャラクターを借り、手塚治虫の空気の底をベースにした短編。閉じられた世界、止まった成長は、そのまま「漫画の中」であり、本来何も起こらない(予定調和)世界で、いきなりの喪失、しかし、それもまた「前提」に押しやられ、「いつか(=世界の終わり)」まで「日常」が続いていくという、切なく美しい漫画批評的な作品。短編集「カトゥーンズ」に収められていそうな作品ではあるが、あれらがスパッと定ページ数に合わせて切り取られた日常で、ドライな印象であるのに対して、もっと湿った読後感がある。