Trials to summarize OKAZAKI KYOKO's unbind comics岡崎京子の未単行本化作品を要約する試み - 東京は朝の7時

東京は朝の7時 朝日ジャーナル(朝日新聞社) 1992年5月29日号 KAWADE 夢ムック・文藝別冊岡崎京子(河出書房新社) 2002年 ※短編集「恋とはどういうものかしら?」(2003年5月 / マガジンハウス)に収録

不勉強ゆえ、どの程度の影響かは知り得ず恐縮なのだけれど、谷川俊太郎の詩にインスパイアされたという小品。ストーリーと呼べるものはなくて、一言でいうならば、いろんな人に、色んな形の朝がやってくる、といったところか。

「東京に居るものは山手線のように同じ日常をぐるぐる空虚に回るしか道はない。」それがもうひとつのテーマであり、色んな事が色んな場所で起こっているのも、それも全てなんでもない日常でしかない。

カトゥーンズが直列の時間軸をスイッチングしながら進んでいくなら、これは同時刻をパラレルに切り取って、東京の色々な場所で、同じ時刻に色々な事が無関係に起きている、というお話。眠りこける編集者と、その編集者に連絡を取りたい漫画家と、漫画家の原稿を待つ印刷所と、という絡みによる遊びもあるのだけれど。

「終わらない夏(好き好き大嫌い・所収)」の冒頭で江智香が集合住宅を眺めて、その事務用ロッカーのような佇まいに「そのひとつひとつに家族とローンがあると思うとごくろうなことだ」と思ったように、俯瞰的な視線で日常を捉えた表現手段のひとつ。